役所づとめのきじばと

ウイングあつかましい言論ゼロカスタム

何フェチなのか

鼻をかんでいた。

こういうお願いをしていいのはだいたい有料で、更にその筋にも理解のある人だけだと思っていた。意気地のないおれに、そのひとは聞いてくれた。「何がしたいの?」煙たいお好み焼屋で聞かれ、答えを出したのはそのひとのアパートでだった。将来的な夢など皆無でしかも、そんなもん持ってる人間に対しても「がんばってください」と素直にいいたい人間のおれにとって、「したい」ことと聞かれても、そりゃもう、今すぐ帰って寝たいくらいのもんだった。玄関のドアの鍵はすんなり開いて、ドアは俺のうちより数段、軽かった。

なかったことにしたかった。いざとなればなかったことにもできた。できるだけつまんながられそうな、でも明日からも、関係はつづけられそうないいわけをして。

たぶん、おれは頬を赤らめていた、おそらく。「で?」と聞かれたときにはブラトップは見せつけられていたし「そういうんじゃないんで」ともいえたが、なすがままに任せようともおもって「泊まっていいんすか、なんて」とかいいそうになってやめて、「泊まります」と宣言したが。

おれは何フェチなんだろうか。頭を撫でられながら、考えていた。とりあえず、コンビニのバイトには受かった人間で、女の部屋にあがれる人間で、前髪は眉毛より下、涙袋ギリ下の人間だ。人間といると安心できて、激唐ラーメン食べに行かなくて、お好み焼屋で全おごりしてもらうような人間だ。外人の女の人の大きいのに圧倒されて、人前で手をつなぐことにどぎまぎしながらも受け入れる人間だし、猫はかわいいと思う。

在庫のことが気がかりだった、キャベツ太郎は今夜何袋、売れるんだろうか。

シカトされたい、お人形遊びしたい、お月様になりたい。全部、つとめられそうな気がしなかった。報ステは消して欲しかった。「布団かけてください」却下されて、古館じゃないひとは、あつくなっていた。

「魔法はたぶん、音楽じゃない。」とか、いいだしたら、「同意」とか、いつものしらしらした声で言われそうな気がした。それには同意できそうになかった。

どっちでもいい。高いか低いかでいえば、低い鼻はもうなんの味かわからなくなっていた。