役所づとめのきじばと

ウイングあつかましい言論ゼロカスタム

炭水化物つまった胸はおまえの枕じゃないんだよ

「おれだってつらいんだよ」といいたげな目で、窓に投げかけた視線に哀れみを感じたから許しているのではなく、純粋にそれのなにが悪いのか分からなくなっていた。事実糞ほど密着してくる。

42歳童貞無職(推定)の幸福はこんなところにしかないのだろうう、なるほどかわいいもんで、自ら手を動かすでもなく、さも偶然ですよ、という白々しい下手糞なツラにこいつの人生のすべてがみえんでもない。こいつの息遣いはたまに荒々しく「わけなくことに及べていますよ。悪いのは私だけじゃない。毎日、こんな鮨詰め作ってそこらじゅうに運ばないと回らない、気がすまない、どうにかなると思い込んでる社会が悪い。私も悪いがあんたらのほうにも問題があるのでは?というより、あんたらも楽しんでるのでは?この状況を?悪人をあぶりだす絶好の機会なのでは?そうなさっては?」と聞かれてるような気がしてくる。そんなとき、告発の手順をシミュレートしてみて、それといって旨みのないことに気付く。

決まって、二駅乗って去っていく。こいつの目的地はどこなんだ。おれではないんだ。家があるのか?おれにしか糞ほど密着してこないくせに。おれのようなガタイの人間が好きなのではなく、おれが好きなのではないのか?雪崩込んでおれに密着失敗した日は、そばにおれと似た身丈のやつがいてもおとなしくドア付近に突っ立っている。外を眺め、ガムを噛むふりをしたり、頬を膨らませたりしている。こういう仕事もほんとはあるのか?

まだ幼い頃に、こいつのようなひとと出会ったことがあった。年はもっと上で60代痩せ型、いつも薄茶色の革ジャンを着ていて、手口はもう少し練られていた。おれの婆ちゃんの知り合いを装って、おれの遊び相手買ってでて、寡黙なおれを肩にのせたり、ブランコにのせたりした。いくらかの接触を求めていただろうことはわかるし、そのときの感触はこいつのよりもはるかに積極的だった。その時は少し逃げたかった。

意志薄弱。ある日、というか、今日、こいつのなにに腹が立てないのか分かった。挫くだけの意志がない。咎めれば素直に認め、なんのおもしろみもない捕物。それこそ悪。