ガンメタル
近頃、ガンメタルのものを見ない。車も楽器も筆箱も学生鞄もそれに近い色は黒だけだ。カメラのカラーラインナップ、黒シルバー赤。「誰に見せるものでもない」から色にはこだわらない奴等が多いという奴等の配慮。無駄にラメを配してくれ。嘘でもギラついてくれ。夜道で轢かれるなら俄然、ガンメタルの車がいい。
「ガンメタル 車」でggってみたところ、おれのガンメタル感は少し違った。どちらかといえばラメなど配されていないし、マットな黒すらガンメタルを名乗ってもいいようだった。おれのガンメタル感はどこからやってきたのか。それはたぶん、祖父の車である。祖父はよく革ジャンを着ていた。胃を半分取って痩せてからなのか、それ以前からずっとなのかは知らないが、革ジャンを着ていたし、ジャケットはあつらえたものしか着ていなかった。死後、それ等はチェーン店の古着屋にただほどの値段で買い取られた。
祖父の乗っていた車は日産車だった。日産のなんていう車かは知らない。セダンタイプというのか。なんにも興味のないなかで特に車には興味がない。wikipediaにずらっと並んだ車種のひとつひとつを見るのはめんどくさい。「日産 ガンメタル」でggっても、それがズバリヒットしない。おれのガンメタル感はそろそろ怪しい。
それはいわばグレーかもしれない、グレーシルバーかもしれない、グレーですらなく単なるブラックかもしれないし、むしろ思い切ってシルバーなのかもしれない。それがガンメタルではないとしたら、おれの原初のガンメタルはどこにあるんだろうか。
そもそも拳銃の色ではない、にもかかわらずガンメタルである。なにをいっているのか。拳銃のガンメタルはggったところおよそ無塗装の鉄丸出しの部分についていわれていることが多い。わざわざラメなど配し、燻したものではない。
ガンメタルはいわば只のメタルの黒っぽくみえるところを模した塗装だ。裸体を気取った着衣。そういえば、スケルトンカラーもガンメタルと同じほど見なくなった。中身など、見世物ではないという考えからだろうか。ワンダースワンのカラーラインナップをggってみて、今日はなんか懐かしくなろうと思った。