役所づとめのきじばと

ウイングあつかましい言論ゼロカスタム

小説

働く

わけねぇんだわ。頭の中の面接シミュレーションでは、ぜんぜん、だれも雇ってくれない。OK、それはべつにそれで。おれがいいたいのはおれを働かせてくれっことではなく、高望みするのはよせよ。ということだ。「いままでなにしてきたの?」たいがいのコン…

炭水化物つまった胸はおまえの枕じゃないんだよ

「おれだってつらいんだよ」といいたげな目で、窓に投げかけた視線に哀れみを感じたから許しているのではなく、純粋にそれのなにが悪いのか分からなくなっていた。事実糞ほど密着してくる。 42歳童貞無職(推定)の幸福はこんなところにしかないのだろうう、…

うすまっていく

女のためにつくられた服を女のひとがきているのを鏡にうつしている。女のひとの立ち方をしているのは女のためにつくられた靴のせいにしている。帰り支度を整えて、ふと死にたくなって、屋上へ登ろうと思った。屋上のドアの鍵は締まっていたのでやめた。興ざ…

涙のコンタクトレンズ

床にあぐらをかいた新山大二郎は床にごとりとグラスをおいて「え、じゃあこういうことじゃん、これがお前の母親でそれもお前の母親で、これもお前の母親ってことじゃん?は?おかしくね?」と部屋の隅の土鍋と俺の右目と今置いたグラスを順番に指さした。 お…

デリヘル「眠り姫」ゆう嬢の7月7日の日記

こんな夢をみました。 わたしはひとり、みかんをむしっているのです。ひとふさひとふさ。ひとふさひとふさ。ぜんぶで8きれのみかんのふさをくしゃくしゃに丸めた、みかんの皮をまた広げて、いっこづつもどしてゆく。朱色の毛糸で縫い直して、だれかにあげよ…

何フェチなのか

鼻をかんでいた。 こういうお願いをしていいのはだいたい有料で、更にその筋にも理解のある人だけだと思っていた。意気地のないおれに、そのひとは聞いてくれた。「何がしたいの?」煙たいお好み焼屋で聞かれ、答えを出したのはそのひとのアパートでだった。…

ゆうと(10)

母は出かけていた。 「すべての恋は裏切りだ」ゆうと(10)の頭にはそんな言葉が言葉にもならず漂っていた。4時には帰らなければならなかった。家に居て、荷物を受け取らなければいけなかった。その任務はなんなく遂行された。なんなく遂行され、急遽新たな任…

ほおずきあげたいおじさん

歩いていた。 ほおずきがなんなのかを知らない。なにかの植物のなにかなのだろうくらいのことは知っているが、そこまで私は知らない。乾けばカラカラになるし、乾かなければしっとりしている。そのしっとりさは鼻セレブよりかはしっとりしていないし、さっき…