役所づとめのきじばと

ウイングあつかましい言論ゼロカスタム

うすまっていく

女のためにつくられた服を女のひとがきているのを鏡にうつしている。女のひとの立ち方をしているのは女のためにつくられた靴のせいにしている。帰り支度を整えて、ふと死にたくなって、屋上へ登ろうと思った。屋上のドアの鍵は締まっていたのでやめた。興ざめした。「雪が鼻にのっかって、とけていくみたいに」と女のためにつくられた鞄から、女のためにつくられたボールペン、女のためにつくられた諸々を女のために包む袋をよけてとりだして、女の中学生が書くみたいにモルタルの壁に、がたがたと記した。あしたも死にたくなったらいいな。あした、ここにきて、あした、これをみてたぶん消したくなるんだろうな。かといって消さないんだろうな。あしたも死にたくなったらいいな。

修正液を買うようなひとにはなりたくなかった気がする。そんな需要に修正テープはいくらかこたえている。塗らして乾くのを待つ暇などはないのだし、下敷きで煽って乾かすような無粋など。下敷きはいらないんだ。「下敷きはいらないが修正テープはいる仕事なんだ」と、さっき書いたやつのすぐ下に書き加え、さらに死にたくなろうと勇気が湧いた。

だれでもできるお仕事、ビットコイン決済が向いているのはそんな仕事だろうと思う。仕入れがいらない、従業員も雇わない、身一つあればやっていける。円を求めない。

そんなわけで、自主営業している、少年限定の夜職のほうは、爆益である。。少年達は案外、退屈で、友人の輪をとても大切にし、新技術の導入もたやすく受け入れ、ちゃんと金をもっている。

だんまり決め込んでるだけで、満足する少年らもいれば、整列され、だんまり決め込まされるだけで、満足する少年らもいた。撮影したがる少年らもいれば「一生、胸にきざんどきますよ」という少年らもいた。約束はひとつだけで、よく守る。ばかみたいに。

仮面はかぶった。狐の面だ。知らぬ街の路地につくと、すぐ少年の家の少年の部屋に上がりこんで。そこでだけ許した。公衆便所や砂浜やビルの隙間以外にも少年達には居場所があった。

「少年のかばんはいつもなんで重そうなのか、なにがはいっているのか」

ふたりきりになってしまった少年に聞いたことがあった。