役所づとめのきじばと

ウイングあつかましい言論ゼロカスタム

涙のコンタクトレンズ

床にあぐらをかいた新山大二郎は床にごとりとグラスをおいて「え、じゃあこういうことじゃん、これがお前の母親でそれもお前の母親で、これもお前の母親ってことじゃん?は?おかしくね?」と部屋の隅の土鍋と俺の右目と今置いたグラスを順番に指さした。

おかしくはないよ。ばかたれ。この世にはてめぇの想像を超える世界がはるかに存在してるんだ。ぬくぬく今日も、おきまりのオカズでマスターベイトして、あしたもおんなじ時間の電車に乗れよ。帰りもおんなじ色の電車に乗ってろハゲ。ハゲ。などと、心優しい友人のぼくはいえるはずもなく「そゆこと」と言う。

こういう言い方が鼻に付くんだろう。「ばっき~ん」とかいって、ティッシュ箱のなかの小銭を目をつぶってつまみ学ランの胸ポケットに入れる。それでいままでお前はなにを買ったんだよ。ハゲ。

「でも、たまにおまえの母親いるじゃん。台所で料理してて、律儀にポテチを届けてくれる」いるよ、ハゲ、おめぇの母親は一匹、二匹って数え方できるかどうか知らねぇがうちのはそういうんじゃないんだ。数えろなどというならリットル、いま何リットルいるのか、おれもわからないが。

そんなことはどうでもよく、いやどうでもよくなく、いまおれの最大関心事は右目と左目でいちぢるしく視力が異なるということで、つまり母さんは減った。

左がやたらぼやけている。あくびをしてねっころがった新山大二郎が真顔なのか、にやついているのか、凝視すれば判別できるのだろうが、それこそどうでもよく、「じゃあ、シコるときどうしとるん?」と聞いてきた。こういうとこほんと嫌いだ。友達同士でも「シコる」とかいうやつ、ほんときらい。性の話、やめて。おれは無言で漫画をよんでいたいんだ、いっしょに、べつべつに、何百回読んだ、ドラえもんを、もくもくと読んで5時になったら帰る。そんな友達が欲しい。

「別にシコらんし」シコとかシコじゃないとか口にしたくない「じゃあ夢精しまくりんぐだぜぇ???」あぁそうだが?「なわけねーし」糞が「まま、ぴゅっぴゅ~???w」そうなんだろうな「知るか」

「ばっき~ん&ばいば~い」どたどたと階段を降りてゆき、アクエリは残していった。