役所づとめのきじばと

ウイングあつかましい言論ゼロカスタム

弱気

「うだうだ抜かしてんじゃねぇよ!!!」平日の昼間の薄暗い、5畳畳敷きの寝室に転がった黒い塊が叫ぶ。戸惑っている自分に戸惑っている。うだうだなど抜かしていないのです。こいつの望みを叶えてやるつもりでいる。「ほんとうにいいんですよね?」わざとらしくかぼそく聞く。「はよ、やれって!!!!!やれよ!!!!」右の拳を握って、利き足と逆を踏ん張って、こいつの腹?に蹴りを入れる。「だめぇ!!!だめぇ!!!ふざけるな!!!やる気ないんなら帰れ!!!!」ドアなどもうとっくに消えてしまって、帰らせてもらえるなら早く帰りたいのですが「ご、ごめんなさいぃ」もう一度蹴りを入れる。いちいち、小心、装うのもこいつの命令なので。「なんで?なんで???殺したいよねぇ??気持ち悪いよねぇ???ぼく、ねぇ??ママ??ねぇママ??ねぇ??」蹴りを入れる。別に殺したくないと、思う。遊びだと思う。ごっこ遊び。なら、真面目にやろう。「あのやっぱり、お腹がいいんですか?」

お腹を蹴ってくださる方募集の張り紙を電柱のてっぺんらへんに見つけたのは先週の金曜日だった。帰り道、どぶ際の草などむしっては、道路にぶちまけていた帰り道。ここら辺で一番おおきなマンションの前らへんの電柱に、張ってあった。黒のマジックで。「お腹を蹴ってくださる方募集。070-××××-5555」新調した眼鏡で常に吐きそうな日常を送っていた私を救ってくれそうな気がした。

蹴りを入れて、聞く「あの、マゾヒストの方ってやっぱり?えっと?性的?性的っていうんですか?そういう、あのそういうの求めて、えと求めて、こういうことなさるんですよね?」「違う!!!」一蹴。「もし、そうだとして!!!そうだとして!!そうだとしても!!!だからこそ!!!お腹!!!お腹なの!!!分かる??わかって!!!駄目!!!失格!!ほんと、失格駄目!!!!」蹴りを入れてから、そろそろ泣けばいいのか?もうちょい、堪えてからか、ん?ぼやけた視界を更にぼやかす。「なに?え?泣く?え?泣く?泣いて、泣いてどうにかなる?え?悔しくない?こいつに泣かされて悔しくない?こんなやつに?え?」蹴りを入れる。