役所づとめのきじばと

ウイングあつかましい言論ゼロカスタム

アンチワナビー

深夜、煙草を吸いたくなって、部屋を出て、煙草をもってくの忘れて、部屋に戻って、煙草をもって、部屋を出て、ライターもってくの忘れて、部屋に戻ってライターをフリースのポケットに入れて、灰皿を故意に忘れて、部屋を出て、家を出て、鍵を閉めて、とりあえず市中心部の公園を目指した。眼鏡をかけないで見る月は大きい。写真に撮ると小さい。何故か。しょんべんしたくなってコンビニにはいろうか、野ションしようかと迷うが、公園の公衆便所までガマンする。ちびったてっていい。心が広い、今日は。

鼻が冷たい。あぶらっぽい鼻にこの外気、触ればきっと冷たい。鼻以上に指が冷たいので触らないし、ねちゃつく。ベンチに座って、ポケットに手をつっこんで、去年買ったまま放置してあったショートホープを取り出して、やっぱ吸うのをやめた。外気がそのまま毒の味がしたので。深夜の公園はいちゃつき放題である。にもかかわらず、この公園でいちゃついてる者はいない。雌雄合一生物を気取って、無性生殖もできたが、ライターの火をぼんやり眺めていたい。固い。カチカチが固い。重い。カチカチが重い。10秒もたず、手が震えだす。指先をあぶってみようか。

「放火魔?」背中から声がして、なんて答えるか心を整えてから、振り返る。「はへぇ?」、「はい?」といったつもりが素っ頓狂な声が出る。JKである。髪の整ったJKである。学校指定のカーディガンを小粋に着こなすJKである。糞ミニとのシルエット差!「え?なにしてるんですか?放火?」「え、あ、ええ、あえっと」

「ちょっと、手伝ってほしんですけど。」ベンチの隅に座って、こっちをまっすぐ見てくる。あざとい。「え?あ、なにを?え?」「うちの、弟が観葉植物になりたいっていいだしたのが今年の九月、それ以来、弟が私の部屋からでていかないんです、水だけしか飲まないんです」は?だから?「簡潔にいったら、家、燃やしてほしいんです、一軒も二軒も同じじゃないですか?」「え?あ?え?嫌だけど?」

じゃあいいですといって、あっさり帰っていって、おれも家に帰ってきたんだが家の前に、小さな多肉植物の鉢がふたつおいてあったので育てることにしたって話。